今月のくるみパン

日本トップシェフの自信作「Tカンパーニュ オ ノア」/トラン・ブルー

VOL.5

日本トップシェフの自信作

トラン・ブルー「Tカンパーニュ オ ノア」

整理券が配られる超人気店

成瀬正シェフが地元の岐阜県高山市に「トラン・ブルー」を開店したのはおよそ四半世紀前。同店は、飛騨高山を訪れる年間400万人の観光客のうち約2.5%が訪れるという“観光名所”に。現在は開店前の朝6時から整理券が配られ、お盆休みには開店前に100人以上が列を成すという大人気店です。
今回は、2013年9月に開催された「2013 カリフォルニア くるみを使ったベーキングセミナー」(主催:カリフォルニアくるみ協会)で講師を務められた際に、成瀬シェフのパン作りへのモットーとおすすめのくるみパンについてお伺いしました。

セミナーで講師を務める成瀬シェフ

セミナーで講師を務める成瀬シェフ

「1+1=3」になる素材づかいを実現

今回の製パン業の人を対象にしたセミナーで、成瀬シェフが提案したのは、くるみを使ったパン9種類。中でも「Tカンパーニュ オ ノア」は、「トラン・ブルー」の“T”を商品名の冠に付けるだけあって、一番の自信作です。「日本人好みのしっとりもっちりとした食感のある酸味のある生地が特徴で、そこにくるみが入ることで、全体的にさらに美味しさを感じられるパンです」。成瀬シェフは、「パンは生地ありき」と語ります。例えばくるみは食事パン、菓子パンなど、どんなパンに合わせても美味しくできてしまう万能な素材。「しかし、まずは生地が美味しくなければ素材も生きない。そこにくるみを入れることで『1+1=3』になる味の実現が、一番苦労した点です」。

もうひとつ紹介してくれた「ガトー ブリオッシュ」は、甘いヴィエノワズリー(菓子パン)。こちらも“生地ありき”のパンです。「これは生地の作り方が珍しいんですよ。ブリオッシュではありますが、パウンドケーキのような食感を創り上げました。新しい可能性を見せるパンだと思っています」。生地にはくるみを入れ、くるみと相性のいいメイプルシロップも練り込んだ。「Tカンパーニュ オ ノア」「ガトー ブリオッシュ」ともに、これからトラン・ブルーの店頭に並ぶ予定です。今セミナーでは、このほかくるみを使ったタルトやピザ感覚の食事パンも登場しました。

Tカンパーニュ オ ノア

くるみの持ち味を最大限に引き出す生地を使った「Tカンパーニュ オ ノア」



「ノワ」180円

パウンドケーキのような食感をパンで実現した「ガトー ブリオッシュ」

高山が育んだ感性がパン作りに生きる

味もさることながら、成瀬シェフのパンで印象的なのがまず見た目です。「そうですね。まず手を伸ばしたくなるパンであることは大事だと思っています」とシェフ。シェフの故郷であり現在も暮らす高山は四季折々の風景が美しい地域です。「秋には店の後ろにそびえる山々が色鮮やかに紅葉し、雪が降ればまるで水墨画のような風景が広がります」。土地が感性を育み、美意識を養ってきた。「新しいパンのアイデアは、まずビジュアルと生地のイメージがパッと頭に湧くことから始まります」とシェフ。それを形にし、さらにイメージに近づけるために改良を重ねる作業をひたすら繰り返して新作が生まれるのです。

高い技術力と斬新なアイデア力をもつ成瀬シェフですが、パン作りで最も大切にしている点は、とにかく手を抜かないことだそう。「パンは熟成発酵食品ですから、熟成・発酵をおろそかにしては美味しいパンはできないのです。手を抜かず、きちんとやる。それにつきると思います。そして焼き上がったパンをさらに美味しくすることを常に考えています」。夢はもっと深く食文化にコミットすること。いつかはカフェやレストランを併設したいと考えている。もうひとつの夢が、かつてトラン・ブルーで修行し、各地でパン作りに励む弟子たちと勉強会を開くことだ。「人間性と技術力を身につけ、それぞれの地元で根を生やしている。彼らの存在が全体の底上げになると信じています」

トラン・ブルー 成瀬シェフ

「スタッフとの付き合いはメリハリを持って」と語る成瀬シェフ。話の端々でスタッフへの愛情がうかがえました

【トラン・ブルー】
岐阜県高山市西之一色町1-73-5
TEL / 0577-33-3989
営業時間 /9時30分~18時30分(売り切れ次第終了)
定休日 / 水曜日(不定休あり)